Mike Macdonaldのディフェンススキーム解説|ツーハイ×Zone Matchの完成形とは

Mike Macdonaldのディフェンススキーム解説|ツーハイ×Zone Matchの完成形とは

2025-2026シーズンのSBに勝利したSEAのMike Macdonaldのスキームについての記事です。

Photo by Getty Images

記事の流れは、次の通りです。
1. 彼のディフェンスが数字的にどれほど優れているのか
2. 実際にスキームの説明
3. 似たスキームのVic Fangioとは何が違うのか

 

歴代ディフェンス成績

彼がDC、HCを務めていた時の成績は次の通りです。

安定した成績を残しており、さらにBALでもSEAでも2年目にはリーグトップディフェンスを構築しているとんでもないコーチです。
特に、2025年のSEAは歴代でも屈指のDVOAを残し、Dark Side DefenseとしてLegion of Boom以来の素晴らしいディフェンスチームでした。

 

 

スキームの特徴

彼のディフェンスの特徴は大きく次の5つです。

①ツーハイセットからのパスカバーのDisguise
②多種多様なパスカバーの使用
③BlitzとDropを組み合わせた複雑なラッシュ
④Nickelの多用
⑤Early downでのRun Blitz


それでは1つずつ見ていきます。

 

①ツーハイセットからのパスカバーのDisguise

彼は、2010年代後半から徐々に流行り始めたツーハイを最も上手く使うコーチの1人です。レギュラーシーズンのツーハイセット率は見つけることができませんでしたが、SBでは90%と高確率でした。

ツーハイセットを使うことにより、パスカバーに制限がなく様々なカバーを敷くことができます。この辺りは他記事でも詳しく書いているので割愛します。

 

②多種多様なパスカバーの使用

そのツーハイセットからZone Matchを中心とした多彩なパスカバーが採用されています。

今のNFLで主に使われているパスカバーはCover 1, 2, 3, 4, 6です。SEAはその中で最も使用してないパスカバーでも12%(Cover 1)も使用しています(GBは最少カバー使用率が14%でリーグ1位で、SEAはその次です)。このように全てのカバーを満遍なく使用するため、パスカバーの予測が非常に難しくなります。
また、ワンハイ系のカバー使用率が44%と、ワンハイとツーハイのカバーもバランス良く使います
これは今のNFLのパスカバーのトレンドです。

 

③BlitzとDropを組み合わせた複雑なラッシュ

フロントに目を向けると、彼はプレッシャーをかけるのが上手いです(Pressure 26%でリーグ6位)。一般的に、Blitzを増やせばPressureも増えていきますが、彼はBlitzはほぼ使いません(Blitz 19%でリーグ26位)。このBlitz %の少なさでこのPressure %を記録しているのは驚きです。

また、なんといってもBlitz時のPressure%はダントツでリーグトップと、Blitzの入れ方が上手いです。


CreepersとSim pressureを効率的に使用し、最低限のラッシュ人数で効果的にpressureをかけます。

さらに、SEAはDBのPressure数がリーグ最多です。


Creepersとして、 LBだけでなくDBも用います。その結果、誰がどこからラッシュしてくるのか、オフェンスがより予想しづらいラッシュとなっています。

 

④Nickelの多用

2024年までNFLではオフェンスのHeavy personnelの使用率は年々下がっていました(パストレンド)。しかし、2025年はそれが少しだけ増えました。これは、11 personnelの増加に伴い、Nickel defenseが増えた(3WRに対して、3CBで対応)ので、逆にHeavy personnelでのランが2025年流行りました(LARのSean McVayを筆頭に)。

一般的に従来主流だった21 personnelに対してはbase defenseで対応が普通です。しかし、MacdonaldはNickel defenseを多用する強気です。


これは、Nick Emmanworiという、もはやLBといってもいいSがいることも大きいです。BAL時代もKyle HamiltonというサイズのあるSをよくboxで使っていました。こういったhybridな選手を獲得しているのもNickelを多用したい思惑があるのだと思います。
そしてこれは、多くのコーチが理想とするディフェンス構造を体現しています。

今のパストレンドでは、NickelなどDBを増やした体型で、さらにツーハイ(Light Box)を多用したいとどのコーチも考えています。しかし、実際は、それではパスを止められてもランが止められなくなるので、成り立ちません。しかし、Macdonaldはそんなディフェンスを構築してしまっています。上グラフを見てもらうと、SEAはSub packagesに対してNickelを多用するに関わらず、EPA/Playでリーグトップを記録しています。

 

⑤Early downでのRun Blitz

前述した通りランを抑えにくい状態(Light Box、Nickel多用)になっているにも関わらず、ランを止めることができている(EPA/Runはリーグ1位)要因の1つは、Run Blitzです。

 

具体的な動きはツイートに書きましたが、スナップ直後にフロント体型の変化と、一時的に8 men boxにすることで、ランを止めにいっています。そのため、単純なLight boxではないことが分かります。
(SBではランプレーの46%でRun Blitzを入れている)

 

Mike MacdonaldとVic Fangioとの違い

ここまでMike Macdonaldのスキームについてまとめてきましたが、このツーハイ(Light box)Zone Match少ないBlitzを特徴とするスキームはPHIのVic Fangioとほぼ同じで、現代NFLのトレンドです。

似ている中で、Fangioとの違いを最後にまとめておきます。

Zone coverの多用

彼は84%のカバーがZone coverです(これはリーグ2位)。一方、Fangioは73%です。MacdonaldはCover 1はあまり使わず、逆にFangioがほとんど使用しないCover 2を使います。

Pressureのかけ方が上手い

これはBAL時代からですが、プレッシャーデザインが非常に優れています。

フロントのDisguiseも好む

今はDisguiseがトレンドの1つになっていて、2人ともパスカバーのDisguiseを多用します。さらに、Macdonaldの場合、後ろだけでなく、BlitzやDropを組み合わせてフロントもより動かします。

 

参考までに、Vic Fangioのディフェンスについての簡単な記事はこちらです。

PHIのDC Vic Fangioの戦術解析(2024年)

 

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