NFLでも多用されているパスカバーのPattern Matching Coverageとは?メリット・デメリット。

NFLでも多用されているパスカバーのPattern Matching Coverageとは?メリット・デメリット。

今回はNFL、カレッジでよく使用されているパスカバーの1つのPattern-Matching Coverageについての記事になります。

Pattern-Matching Coverageは昔からあるパスカバーですが、あまり知られていないので自分の勉強がてら書いていきます。

この記事は次のような流れになっています。まず、Pattern-Matching Coverageの非常に簡単な説明をします。その後、そもそもこのパスカバーが生まれた背景について書きます。そして、Pattern-Matching Coverageの詳しい説明。最後に、このパスカバーのメリット、デメリットについてという内容になっています。

AlabamaのHC Nick Saban(左)とNEのHC Bill Belichick(右)

Photo by: https://collegefootballtalk.nbcsports.com/2019/09/03/nick-saban-plus-some-belichick-guy-to-get-the-documentary-treatment-from-hbo/

Pattern-Matching Coverageとは?

Pattern-Matching Coverageとはパスカバーの内の1つです。パスカバーは基本的にマンカバーとゾーンカバーの2つに分けられますが、そのどちらにも属さないと言えます。強いて言うなら、ゾーンカバー相手のパスコンセプトに合わせてゾーンを変化させます
普通のゾーンカバーなら各選手がカバーするゾーンはあらかじめ決められています。しかし、Pattern-Matching Coverageでは決まっていません。相手に合わせます。そのため、ディープに3人のレシーバーが走りこんでくれば、ディープゾーンのカバーを3人でします。4人ディープにくれば4人でディープをカバーします。

Pattern-Matching Coverageがどんなものかぼんやりとは見えたと思うので、ここでこれが生まれた背景について書きます。

生まれた背景

Pattern-Matching Coverageが生まれた背景などについてはこの記事で詳しく書かれています
→ Film room: What is Pattern Match Zone?

発明したのは、現NEのHCビル・ベリチックと現AlabamaのHCニック・セイバンです。1994年、ベリチックがCLEのHCでセイバンが同じくCLEのDCだったときのことです。

彼らはアメフトで重要なランを止めるために、2人のSのうち1人をボックスに上げる8メンフロントを採用していました。8メンフロントではワンハイ(最後尾にSが1人)になるため、必然的にパスカバーはCover 1Cover 3に限られます。しかし、Cover 1でパスを抑えるには優れたCBが2、3人は必要となります(Cover 1はマンカバーなので弱いCBが1人でもいればそこを狙い撃ちされる)。当時、CLEは優れたCBを揃えることができず、彼らはやむなくCover 3を採用します。しかし、Cover 3では4人のレシーバーにディープを狙われた際、大事故になります(下記画像参照)。

Photo by: https://annoyedfootballnerd.wordpress.com/2014/08/25/concept-examination-get-deep-by-being-shallow-cross/

そこで、彼らは悩みましたが、ついに解決策を見つけました。それがPattern-Matching Coverageです。

それではここからそのパスカバーの細かい説明をしていきます。

Pattern-Matching Coverageのカバー方法

ここで、記事の最初の方で雑に説明したのを思い出してください。Pattern-Matching Coverageは、相手に合わせて担当ゾーンを変化させるゾーンカバーです。そのため、Pattern-Matching Coverageでは、4人のレシーバーが奥に走りこんできても対応できます。具体的な例は下になります。

Cover 3を基にしたPattern-Matching Coverageでは、オフェンスのFour Verticalsに対して次のようにカバーします。

Photo by: https://www.aseaofblue.com/2014/8/5/5970547/kentucky-football-pattern-matching-basics

対して、4人もレシーバーが奥に走りこんでこないパスコンセプトに対しては次のように対応します。

Photo by: https://www.aseaofblue.com/2014/8/5/5970547/kentucky-football-pattern-matching-basics

これは通常のCover 3のパスカバーと同じですね。

ここで、Pattern-Matching Coverageのルールをまとめると次のようになります。

外CB(通常のCover 3と同じ)

ディープの大外担当。対面の#1レシーバーを見る、#1がロング以外でブレイクしたら、その内側の#2レシーバーを見る。

スロットDB(上の2枚の画像ではNBとSS)(通常のCover 3と役割が異なる

対面の#2レシーバーを見る、対面の#2レシーバーが縦系のルートでかつ、#1も縦系なら#2にそのままマンカバー(この動きが通常のCover 3と異なる)。#2が短いルートでブレイクしたら通常のCover 3と同じ。

なんで、スロットに入るDBの担当ゾーンがスナップ前には決まっておらず相手に合わせて変わります
#1が早めにブレイクした場合は#2のルートに関わらずスロットDBはアンダーゾーンをカバーしなければならないため、その場合、#1の対面の外CBはスロットDBに素早く声掛けする必要があります。

実際のPattern-Matching Coverageの動きは次のようになっています。

ディフェンスから見て右サイドは#1レシーバーのみ縦系のコースなので、通常のCover 3です。左サイドは#1、#2レシーバー共に縦系のコースなので左スロットバックがマンツーで#2についていっています。通常のCover 3では、その場にステイするはずです。これがPattern-Matching Coverageです。
NFLでも一見するとCover 3ですが、よく見るとPattern-Matching Coverageという場合がよくあります。

メリットとデメリット

このパスカバーのメリットとデメリットは次のようになっています。

メリット

・前述したように相手に合わせれるので、ゾーンカバーの弱点である1つのゾーンを複数のレシーバーに狙われるという恐れがほとんどない

デメリット

・スナップ後に担当ゾーンが変わるので素早い判断、お互いのコミュニケーションが必要

・#2レシーバに縦系のルートでSeamを狙われても机上ではカバーできるが、良いTEだとミスマッチになることが多い。

まとめ

今回はNFLやカレッジで多用されているPattern-Matching Coverageというパスカバーについての記事でした。このカバーは相手オフェンスに合わせてゾーンを変えるものでした。通常のテレビ映像ではほぼ判断できないので、22人全員が映っている映像でPattern-Matching Coverageかどうか確認してみて下さい。

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