PHIのDC Vic Fangioの戦術解析(2024年)

PHIのDC Vic Fangioの戦術解析(2024年)

現役最高DCと言っても過言ではない、DC Vic Fangioについての記事です。

Photo by: https://www.facebook.com/94wip/posts/66-year-old-philadelphia-eagles-defensive-coordinator-vic-fangio-with-a-legendar/1120101536792784/

記事の流れは次の通りです。
・彼の過去の戦績
・彼のディフェンスの3つの特徴
・2024年PHIディフェンスの特徴

 

過去の戦績

彼のキャリアの中で目立ち始めたSF以降でまとめます。表中の数字はリーグ内の順位です。

このように、ここ数十年は各チームでリーグトップクラスの成績を残しています。さらに、皆さんご存じのように2024年シーズンはPHIで見事SBに初勝利しました。

 

ディフェンスの3つの特徴

彼のディフェンスは大きく次のような特徴があります。

①ツーハイ(Light Box)
②低いblitz使用率
③DLの1.5 Gap Control


大きな特徴はツーハイをベースとしたLight Boxの体型を多用することです。

①ツーハイ(Light Box)

彼はツーハイを多用します。これには様々な理由がありますが、大きいのはディスガイズできることです。プレスナップの段階がワンハイとなると、その後のパスカバーはある程度制限されてしまいます。
ちなみに、スナップ前後でMOFC・MOFOが変わった率は2024年リーグ9位です。

また、後述しますが、似たパスカバーのCover 4,6,8を多用するので、スナップ後もカバーをリードされにくくしています

 

②低いblitz使用率

パスカバーの人数を減らしたくないので、blitzはあまりしません(2024年はリーグ27位)。さらに6人以上のラッシュ率はリーグ31位です。
また、blitzを入れてもEdgeをパスカバーにドロップさせて、結局ラッシュは4人のみというパターンもよくあります。

ここから分かるように、彼はパスプレーに対して後ろに人数をかけて守ることを重視しています。

 

③DLの1.5 Gap Control

Light Boxやblitz無しでランを抑えるための手段の1つが、DLの1.5 Gap controlです(通常のDLは2 Gapもしくは1 Gapの責任を持ちます)。細かい内容は割愛します。

 

 

またここには挙げていませんが、ボックス体型としてPenny(5-1)をよく使います。2018年彼がSean McVayのLARをこれで抑えて、その年のSB含めて流行ったのは有名な話です。

これらが基本的な彼のディフェンスの特徴です。これらがベースにありながら、その上で2024年PHIの特徴についても見ていきます。

 

2024年PHIディフェンスの特徴

・Zone Matchの多用

Zone MatchであるCover 4,6,8の合計使用率(36%)はリーグ最多でした。ちなみに、PHIのパスカバー使用率は次の通りです。

Cover 3が30%(リーグ16位)
Cover 1が24%(リーグ14位)
Cover 4が20%(リーグ7位)
Cover 6,8が16%(リーグ1位)

 

ちなみに、2015~2018年のCHI時代は少し傾向が違いました。
Cover 1が31%(リーグ24位)、Cover 3が21%(リーグ26位)、Cover 2-Manが17%(リーグ2位)Cover 2が15%(リーグ10位)Cover 4が12%(リーグ9位)となっています。
Cover 4はこのときからリーグ平均より使っていました。一方で、Cover 2、Cover 2 Manは2024年は全く使わなくなり、合わせてわずか3%でした。

PHIはこのZone Matchが本当に美しいです。各選手のコミュニケーションが取られており、フリーのレシーバーを作ることなく、さらにLeverageを活かしたパスカバーが出来ています。

 

また、3×1が流行っている今のNFLで、その対策は必須となっており、3×1に対する彼の有名なCheck Callは次の通りです。

Cover 4,6,8の場合:Trix, Book, Area
Cover 3の場合:Strap


この説明を始めると長くなるので割愛します(また別のブログ記事で説明します)が、簡単に説明するとTripsサイドのディフェンスの人数配置を増やすやり方です。これは他のCoachも使っているやり方で、Saban用語では、TrixはPoach、BookはStubbie、AreaはStump(厳密には少し異なる)、StrapはSkinnyと呼ばれています。

一方、単騎サイドのCBはほぼ1対1で外WRを抑える必要がありますが、ルーキーQuinyon Mitchellの活躍もありました。

 

 

最後にKCとのSBについて軽く触れます。
この試合は、Cover 4がかなりハマっていました。シーズン中の2.5倍使用しており、KCはコンセプトが外れたように見えました。Cover 4ではunderneathを複数人で狙うと空きやすいですが、KCはそこを狙うことはほぼなく、時間のかかるパスプレーが多かったです。そのため、PHIのラッシュ陣に捕まっていました。

SBでの各パスカバー使用率は次の通りです。
※()内の数字がシーズン中の使用率
Cover 4が28回で55%(20%)
Cover 3が11回で22%(30%)
Cover 6,8が8回で16%(16%)
Cover 1が4回で8%(24%)

 

さらに、PHIのZone Matchは素晴らしく、ゾーンの受け渡しや狙い所となる3×1の単騎サイドのCBのMegもきっちりカバー出来ていました。ぜひCoaches filmなどで確認して欲しいです。

 

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