【NFL戦術解説】MIN守備がリーグトップクラスになった理由|Brian Floresのカオスなディフェンスとは

【NFL戦術解説】MIN守備がリーグトップクラスになった理由|Brian Floresのカオスなディフェンスとは

DC Brian Flores率いるMINのディフェンスについての記事です。

Photo by: https://www.espn.com/nfl/story/_/id/42350446/vikings-dc-brian-flores-says-love-nfl-hc-again

 

DC Brian Floresは、Assistant Coach of the Yearの受賞こそ逃しましたが、Ben Johnsonの364 ptsに次ぐ143 ptsを獲得しました。そしてMINで好成績を残し、今注目のDCでかつ、面白いスキームなので記事を書こうと思います。

Photo by: https://x.com/RNBWCV/status/1887837632433942742

記事の流れとして、まずミネソタバイキングスの昨年2024年の成績について、その後スキームについての深掘りとなっています。

 

MINの2024年の成績

成績は下記の通りでリーグトップクラスのディフェンス成績です。

DVOA:リーグ2位
EPA/Play:リーグ3位
Pts/Drive:リーグ4位
Pts:リーグ5位

EPA/Pass play:リーグ5位
Passer Rating:リーグ2位
Pass Yds:リーグ28位

EPA/Run play :リーグ1位
Run Yds:リーグ2位

Takeaways:リーグ1位

 

MINのBrian Floresのディフェンス特徴

Brian Floresのディフェンスには大きく次の3つの特徴があります。

①Blitz
②Disguise
③ツーハイ

 

それでは1つずつ見ていきます。

 

特徴①Blitz

①-1:高いBlitz使用率

Floresと言えばBlitzというくらい彼はBlitzを多用し、2024年もリーグトップでした(プレッシャー率はリーグ6位)。その前年の2023年もリーグトップです。

彼は5人ラッシュをリーグで最も使用します(6人以上のラッシュ率はリーグ9位)。ただし、彼の場合、DL+1人Blitzのような単純な5人ラッシュではなく、後述するSim PressureとBlitzを組み合わせてカオスを作り出します。

 

①-2:1st, 2nd downでのBlitz多用

一般的にBlitzは3rd downのパスシチュエーションで使用率が上がります。しかし、彼は3rd downでのBlitz使用率は低い一方で、1st, 2nd downでのBlitz率はリーグトップです(データを見たことはあるのですが見当たらず、リーグ何位かまでは不明) 。

これは、1st down更新を防ぐために3rd downでBlitzを仕掛けて更新を防ぐという考え方ではなく、そもそも3rd&ロングを作って1st down更新を防ぐという考え方です。
というのも、そもそも3rd&ショートになるとblitzを仕掛けても1st down更新の確率が高まってしまうため、3rd downの前が大事だと彼は考えています。そのため、1st, 2nd downでリスクを取ってBlitzを入れます。

 

①-3:Sim pressure

とにかく彼はスクリメージに人を密集させます(笑)LB、Sは動き回りながらblitzを仕掛けたりdropしたりして、OLに誰がラッシュするか的を絞らせません。とにかくカオスです。
ちなみにSim Pressure率は29%でリーグ7位です。

 

①-4:4メンラッシュでもzone blitzで混乱させ続ける

先ほど述べたことと関連しますが、彼はシンプルな4メンラッシュをとにかく使いません。4人ラッシュの場合でも、スクリメージにはたくさん人を並べたり、通常ラッシュするDLをdropさせLBをラッシュさせたりします。

 

①-5:3メンラッシュ

スクリメージに人を集めて、逆に3メンラッシュになることもあります。

 

ここまで述べた5つの策を用いながら、スクリメージにカオスを作り出すことでプレッシャーをかけたり、フォルススタートを誘発するのが彼の大きな特徴の1つです。

次の動画は一例です。

 

特徴②Disguise

前述したラッシュだけでなく、パスカバーも巧みにディスガイズします。それも、最近トレンドのツーハイからワンハイに移行するような小さなレベルではなく、大きなローテーションを伴うDisguiseを行います。

この動画では、プレスナップ時点ではワンハイが予想されますが、実際はツーハイのTampa 2に移行しています。それも、簡単なディスガイズではなく、Deep 1/2を守るのはボックスにセットしているS普段ツーハイに入ることが少ないCBの2人です。

次の動画のディスガイズも面白いです。モーションに付いていく選手はどちらのサイドに移動したとしても、Deep 1/2に入るという変わったルールでディスガイズしているパスカバーです。

この辺りの大胆なローテーションはKCのSteve Spagnuoloを思い出させます。

 

特徴③ツーハイ

Brian FloresのMINは2023年はここまでトップの成績を残せてはいませんでした(EPA/Playはリーグ10位辺り)それが2024年ここまでの成績を残した1つの要因は、ツーハイ使用率を上げたことだと考えています。ツーハイ使用率は2023年の35%に対し、2024年は54%(リーグ1位)と1年で約1.5倍まで増やしているのが分かります。

さらにblitzとツーハイの組み合わせ(特にTango)がよく効いていました。これまでFloresと言えば、blitzを入れた後ろはマンカバーが多く、さらにCover 0を多用していました。2023年のCover 0使用率は12%(リーグ断トツ1位)で2024年は5%となっています。

Cover 0はプレッシャーがかかった時はいいのですが、裏を取られたときにビッグプレーにつながるリスクが大きいです。それをTangoにすることで、ビッグプレーをケアしながらかつZone Matchでタイトにカバーできます。(ただし、Underのカバーが手薄になることもありDETやLARにはこのエリアを狙われ相手オフェンスを止めることが出来ませんでした。)

 

全体として2024年単年で見ると、彼はSpagnuoloと似たようなディフェンススキームを構築しており、今のトレンドにのったツーハイ中心のスキームと言えます。

 

まとめ

ここまでFloresのディフェンスについて細かく見てきましたが、まとめると彼はカオスを作り出すのが上手いDCです。プレッシャーのかけ方パスカバーのDisguise、どちらもリスクをかけて、相手オフェンスに混乱を生じさせます。その結果として、2024年はリーグトップのINT数を記録しました。

またあまり見ない、ディフェンス側が即時にプレー変更を行う“オーディブル的”な対応も見られます(下動画)。こんなカオスなディフェンスはFloresぐらいでしか見たことがありません。ここまで、ディフェンスに動き回られると、オフェンスもかなり混乱します。

 

彼のディフェンスはプレスナップの動きが多いので、観戦する分にもかなり面白いのではないかと思います。2025年注目のDCの1人ですね。

 

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