KCのDCのSteve Spagnuoloについての記事です。
彼は、DCとしては過去5年にわたりKCを率いており(CINのLou Anarumoと並び今のDCの中では最長)、さらにSBリングも持っている、能力のあるDCの1人です。
この記事では、まずKCでの成績について確認し、その次に彼のディフェンスの特徴・スキームについて書いていきます。
Photo by: https://www.profootballnetwork.com/forgotten-nfl-head-coaching-candidates-2024/
KCでの成績
上表がKCでの主要成績でそれぞれリーグ何位かを示しています。オフェンスの力も大きいですが、KCのDC就任2019年からの5年間で2度のSB Champions、2度のAFC Championsという立派な成績です(2023年はSB前の時点で)。
彼のディフェンスの数字上の特徴として、Blitz率、Pressure率が高いこと、DADOT(Defensive aDOT is the average depth of target on all passes thrown against a team)の値が小さいことが挙げられます。この数字の通り、Blitzが多く、ロングパスをあまり投げられていないことが分かります。
逆にランの成績はそこまで良くありません。
Spagnuoloディフェンスの特徴
それでは、ここから具体的に彼のディフェンスの特徴について書いていきます。下のような特徴があるので1つずつ見ていきます。
①-1. DB blitz
② ディスガイズ
②-1. Nickelにdeep zoneを守らせるディスガイズ
②-2. MOFC→MOFOへのディスガイズ
②-3. 多様なDime defenseの活用
③ MOFO(ツーハイ)
①Pressure率が高くその中でもUnblock Puressure率が高い
前述したようにPressure率が高く、またBlitz率も高いため攻めのディフェンスと言えます。さらに、オフェンスにブロックされてないフリーのラッシャーによるPressure数はリーグトップで、blitzを効果的に使用しています。
The Chiefs defense led the league in unblocked pressures during the regular season (73).
— Next Gen Stats (@NextGenStats) January 17, 2024
The Chiefs generated 7 unblocked pressures in Week 14 against the Bills, tied for the unit’s most in a game this season.#BUFvsKC | #ChiefsKingdom pic.twitter.com/2r6vVbV4jK
その要因の1つがDB blitzを多用していることで、2023年は19.9%でリーグ3位でした。中でも、Trent McDuffieの17 pressureはCBでトップです。
②複雑なディスガイズが多い
次の特徴として、ディスガイズが多いことが挙げられ、それも簡単なディスガイズではなく複雑なものが多いです。
②-1. Nickelをdeep zoneのカバーに使う
多くのパスカバーでは、両safety・外CBのいずれかがdeep zoneを担当します(Cover 2:両S。Cover 3:Sと外CB。Cover 4:両S、外CB)。そのため、QBのパスカバーのreadとしては、それらの選手(特に両S)の位置を確認してカバーを判断します。
しかし、Spagnuoloはスナップ後にNickelをdeep zoneまで下げるディスガイズをすることがありQBはNickelの動きまで見れないことが多いので読み間違いしてしまいます。彼がよく使うのが下のようなパスカバーです。
Photo by: https://www.matchquarters.com/p/trap-check-kansas-city-chiefs-spagnuolo
プレスナップの時点で、片方のSがボックスに上がったMOFCなのでQBとしてはCover 1か3を予測します。しかし、実際はNickelがdeep 1/2まで下がるCover 2です。
(QBの正確なProgressionは分かりませんが、この場合QBはBlitzが入っているのでその裏のYのクロスを狙う可能性が高いです(Cover 1でもクロスはマンカバーしにくい、Cover 3でもLBの裏は空きがちなため)。しかし、Cover 2でMがwall-2で#2のクロス系のルートをケアするので、Yのクロスはカバーされるというものです。)
特に、CB Trent McDuffieは基本的にslotに入ることが多いですが、deep zoneをカバーしたりします。(彼は他にも、KCで最も多くblitzにも入っておりCBトップのpressure回数を記録するなど様々な役割を任せられており、その活躍から2年目にも関わらずAll-Proに選出されています。)
②-2. MOFC(ワンハイ)からMOFO(ツーハイ)へのディスガイズが多い
一般的に多いのは、MOFO(ツーハイ)からMOFC(ワンハイ)へのディスガイズです。これは下図のようにツーハイからワンハイの場合、SSは前へ移動しながらプレイできるからです。
Photo by: https://de.wikipedia.org/wiki/Cover_3
逆のワンハイからツーハイは、後ろへ下がりながらも正面のオフェンスプレーヤーを見る、やりにくい動きになってしまいます。そんな欠点もありますが、あまり使われてないのでディスガイズとしては効果的です。
・MOFO→MOFCの方が多い
MOFO→MOFC:18%
MOFC→MOFO:7%
・②-3. Dime defense(、Nickel defense)の活用
これらのディスガイズを実現するために、また選択肢を増やすために、彼はDBを増やしたdime defenseを活用します。
③MOFO(ツーハイ)が多い
KCは2023年、MOFOのパスカバーの使用率が60.8%でNFLトップとなっています。
blitzを多用するdefenseは一般的にハイリスクハイリターンのdefenseで、blitzが当たればいいが外されるとビッグゲインになることが多いです。しかし、彼はそれをケアするためにいわゆるメリハリをかけたdefenseを敷いており、blitzしないときはしっかりツーハイでビッグプレイを防ぎます(blitzしたときでも②-1,2で述べたようなツーハイが多かったりします)。
Explosive Plays Allowed table updated through 15 weeks pic.twitter.com/sKEsGlw7UX
— Arjun Menon (@arjunmenon100) December 19, 2023
これは序盤に述べた、DADOT(Defensive aDOT is the average depth of target on all passes thrown against a team)の値が小さいことにも寄与しており、後ろを2枚でカバーしているため短いパスターゲットが増えています。
逆にツーハイのためLight box(ボックスに選手が7人以下)が多いため、ランの成績は悪いです。
まとめ
改めて、Spagnuoloのディフェンスについてまとめると下のようになります。
①-1. DB blitz
② ディスガイズ
②-1. Nickelにdeep zoneを守らせるディスガイズ
②-2. MOFC→MOFOへのディスガイズ
②-3. 多様なDime defenseの活用
③ MOFO(ツーハイ)
様々なblitzやdesguiseを見せてくれるので、個人的には見ていて飽きないdefenseです。彼の試合を見る際は、ぜひ上のポイントに着目して見てみて下さい。