2020年代のNFLのディフェンススキームのトレンドについての記事です。
2010年代のSEAを中心とするCover3ディフェンス全盛期が終わりを迎えているので、次のトレンドスキームについて書いていこうと思います。
記事の流れは次の通りです。
まず、それまでのトレンドについて→次に今のトレンドは→なぜそれが増えてきているのか→そのメリット・デメリットについてという流れです。
それまで(2010年代)のディフェンスのトレンド
以前のトレンドはCover3を中心としたシングルハイのディフェンスでした。
これは下記記事にも書きましたが、ディープのFSとCBの間のSeamという明確な弱点があり、近年はスロットやTEにそのスペースを狙われることも多くなってきました。また、Cover3メインでディフェンスをするにはカバーの欠点を補える高い能力を必要とする選手が必要でした。(SEAのFSアール・トーマス、MLBボビー・ワグナーなど)
NFLのディフェンスはオフェンスに後れを取っている。NFLベストのパスカバーは?
2010年代後半にそのSEAのLOBが解体されてからは各チーム様々なディフェンスを構築していました。そして最近次のスキームがトレンドになってきています。
今(2020年前半)のトレンドはツーハイ
最近、ツーハイのディフェンスを採用するのがNFL全体でも下記グラフのように増えてきています。
https://www.pff.com/news/nfl-analyzing-effectiveness-vic-fangio-and-brandon-staley-pre-snap-two-high-safety-scheme-2021
また、昨年2020年のNo.1ディフェンスはツーハイを主としていたLARでした。Points / Game、Points / Drive共にリーグ1位でした。
実際、ラムズは昨年2020年プレスナップの時点でのツーハイの割合はリーグトップでした。
.@RamsNFL DC Brandon Staley using a similar scheme to Vic Fangio (spent 3 yrs together in DEN & CHI)
— NFL Research (@NFLResearch) December 3, 2020
Rams & @Broncos – only teams to align pre-snap w/ 2-High safeties (Middle of Field Open) on 60+% of def snaps per @PFF & employ light boxes on 75+% of def snaps per @NextGenStats pic.twitter.com/ddYQQ1LZsv
ラムズのディフェンスについては下記記事にも書きました。
なぜラムズディフェンスがリーグNo.1の成績を残したのか
このように、ツーハイの使用率が増えてきており、さらに2020年リーグトップのディフェンスチームがツーハイメインだったこともあり、今年2021年はNFL全体で見てツーハイの使用率がさらに上がっています。
なぜツーハイが主流となってきているのか
その理由は2つあり、①2RBの減少、ランプレイの減少②使えるパスカバーの豊富さです。
①2RBの減少、ランプレイの減少
これは2010年から続いていることですが、ランプレイが減ってきています。ランプレイ抑えるためには、「ランは人数で止める」と言われることもあるぐらいボックス内の人数が重要になってきます。そのランプレイが減ってきているため、わざわざシングルハイにしてSSをボックス内に上げる必要がなくなってきています。
②使えるパスカバーの豊富さ
プレスナップの時点でシングルハイのセットだとそこからパスカバーをある程度絞られます。具体的にはCover1,3であることがほとんどで、そこからCover2,4,6に派生することはほぼありません。そのため、オフェンスとしては狙うポイントを絞れます。(SEAのように広い守備範囲を持つFSアール・トーマス、CBリチャード・シャーマンなどがいれば弱点をもカバーできますが。)
ツーハイであれば、Cover2,4,6はもちろん、Cover1,3に派生することも容易です。Sが後ろから上がってくるだけなので。そのため、オフェンス側もパスカバーを予測しづらく、まずパスカバーを判断するのに時間がかかります。
それらの理由から、パスハッピーとなっている今の時代のパスプレイを抑えるためにツーハイが主流になってきました。
ツーハイのメリット
ツーハイディフェンスのメリットは大きく次の2つがあります。
①様々なパスカバーに派生できる、ディスガイズし易い
これは先程説明したことですが、ほぼ全てのパスカバーに派生できるのでオフェンスが読みづらく、今のパス主流のNFLオフェンスを止めるのに適しています。シングルハイのようにスナップ前にパスカバーがある程度絞られていてはパスが通され易いです。
また、ディスガイズし易いです。これは、ツーハイからシングルハイ系のカバーにディスガイズする際は、Sは前に上がりながらディフェンスできるので、逆のシングルハイからツーハイにディスガイズするパスカバーよりSの能力を必要としません。
②クロス系に強い
最近のオフェンスは下記グラフのようにクロス系のパスコースが増えてきています。詳しくはこの記事へ。
ディープへのクロスルートではCover3のSeamのLBとFSの間、FSとCBの間をオフェンスは狙うことが多くなっています。このエリアは最後尾にSが1人しかいないシングルハイではそのSが前に上がりにくく抑えるのが難しいです。
一方ツーハイのカバーでは、後ろにSが2人いるので逆サイドからのクロス系のルートにも対応できます。
Photo by: http://breakdownsports.blogspot.com/2015/05/football-fundamentals-cover-4-defense-playbook.html
ツーハイのデメリット
①ボックスの人数が少ない
シングルハイのように8 men boxは出来ないのでボックスの人数は少なく、一般的にランディフェンスは苦手としています。
②Sに高いランサポート能力が求められる
前述したようにボックスの人数が減るので、Sが上がるスピードが遅ければランでヤードを稼がれます。
シングルハイのFSは広いパスカバー範囲を求められますが、ツーハイのSはランでの早い上がりを求められます。
まとめ
今回はSEAを中心としたCover3ディフェンスの次のトレンドのツーハイディフェンスについての記事でした。まだまだ歴史が浅いので今後のオフェンスの対応も楽しみです。