CBの評価の仕方に関しての記事になります。
CBは単純にINT、PDといったスタッツのみで評価できるポジションではない(INT、PDが多いのは単純にパスターゲットが多いだけかもしれない(パスキャッチを許すことが多いかもしれない)から)ため、そんなCBに関して、良いCBとそうでないCBの見分け方に関して記事にします。
私は、主に下記表の項目で評価しており、ドラフト候補選手などのfilmを見るときもこの点に着目しています。
(今回はマンカバーに関してのみです。ゾーンカバーでは求められる能力が大きく異なりややこしいので、まずはマンカバーに関して書いていきます)
フェイズ | 評価項目 | 良い例 (参考) | |
---|---|---|---|
1 | リリース時 | バンプの上手さ (ハンドテクニック) | Asomugha |
リリースフェイクに釣られないか (腰を開かず我慢できるか) | Revis | ||
リリースに対して滑らかに反転できるか (腰を滑らかに開けれるか) | Harris | ||
2 | リリース ~ ブレイク | レシーバーに付いていくスピード | Peterson |
チェックの上手さ | Rhodes | ||
3 | ブレイク時 | ブレイクに対する反応の早さ、 ブレイクに対する読み | Gilmore |
ブレイクに対する切り返しのスムーズさ Change of Direction能力 | Revis | ||
4 | ブレイク後 | バースト(加速) | Samuel |
トップスピード (ディープルートで置いていかれないか) | Peterson | ||
5 | キャッチ 直前 | ボールを振り返るタイミング | Diggs |
ボールへのアクセスの上手さ (ボールスキル) | Sherman |
評価項目に関しては①リリース時、②リリース~ブレイク、③ブレイク時、④ブレイク後、⑤キャッチ直前の5つのフェイズで見るポイントが変わってきます。
それでは、その各フェイズに関して詳細説明します。
フェイズ① リリース時
1つ目のフェイズはスナップしてからすぐのリリースの段階です。
このタイミングでレシーバーはリリースフェイクを使いながらまず位置関係で先手を取ろうとしてきます。Devante Adamsのようなリリースフェイクが上手いレシーバーはリリースだけでCBを置き去りにします。
そのため、このフェイズでのCBの目的はリリースでセパレートされないことです。フェイクを意識しすぎて動かなすぎると逆に置いて行かれるので、適切なポジション取りで適切なタイミングで腰を開く必要があります。また、このタイミングでCBはバンプを打って、CB側から仕掛けてレシーバーの動き・タイミングを邪魔することも重要です。
このフェイズで置いていかれると、それ以降の能力が高くてもどうしようもできません。
そのため、評価項目は、バンプの上手さ、リリースフェイクに釣られないこと、リリースに対して滑らかに反転できるかの3つです。それでは、1つ1つについて見ていきます。
バンプの上手さ(ハンドテクニック)
Photo by Jevone Moore/Icon Sportswire via Getty Images)
バンプまでするCBは少ないですが、多くの選手は写真のようにjam(ハンドチェック)を行い、レシーバーがスムーズにリリースできないようにします。
適切なタイミングでチェックできればレシーバーは思うように動けず本来のルートを走れません。
NFL選手では、Nnamdi Asomugha、Xavier Rhodesらが上手いです。
前者はPress coverageが上手い選手で32 1/4’’の長い腕を活かしたハンドチェックで、レシーバーを自由にさせませんでした。また後者はフィジカルの強さを活かしたPressが上手かったです(ちなみに、調べて驚きましたが腕もかなり長い(33 3/4’’))。
リリースフェイクに釣られないか(腰を開かず我慢できるか)
Photo by: https://thesportswave.net/the-art-of-the-cornerback-the-hardest-physical-position-in-the-nfl/
レシーバーは十中八九リリースでフェイクをしてくるので、如何にそれに釣られず(フェイクに対して腰を開いてしまうとその逆を突かれる)対応できるかが重要です。
これに関してはNFL選手は釣られない選手が多いですが、中でもDarrelle Revisをフェイクにかけることは難しいです。
リリースに対して滑らかに反転できるか(腰を滑らかに開けれるか)
前項目1-2と似ている項目です。
リリースフェイクに対して我慢することは重要ですが、かといって我慢しすぎると置いていかれるので、適切なタイミングで素早く反転する必要があります。これが難しいです。
NFLでは小柄なCBのChris Harrisが上手かったです。
フェイズ② リリース~ブレイク
続いて2つ目のフェイズはリリースしてからレシーバーがブレイクするまでの短い段階です。
このフェイズでのCBの目的は、レシーバーに無理なくついていくことと、レシーバーをチェックし続けて自由にルートを走らせないことです。
スピードがないとブレイクまでに全力でレシーバーに付いていくことになりブレイクされた瞬間に付いていくのが厳しくなります。そのため、ある程度余裕をもって付いていけるとブレイクに対して余裕が出ます。
そのため、評価項目は、スピード、チェックの上手さの2つです。それでは、1つ1つについて見ていきます。
レシーバーに付いていくスピード
これは文字通りですが、具体的にはスナップ時のバックペダル~反転~加速といった能力が求められます。
NFLでは、Patrick Petersonといった身体能力が魅力の選手がいます。
チェックの上手さ
これは1-1の項目(バンプの上手さ)と似ていますが、このフェイズではバンプほどチェックすることはできないので如何にイエローフラッグを投げられない範囲で行うかが重要です。掴みすぎてDPIになるのをよく見ると思います。
NFLでは、前述したXavier Rhodesはやはり上手いです。
フェイズ③ ブレイク時
3つ目のフェイズはレシーバーがブレイクする段階です。
このタイミングでレシーバーはブレイクして、いよいよキャッチポイントに向かいます。CBは基本的に後追いなので一瞬セパレートされます。
そのため、このフェイズでのCBの目的はブレイク時のセパレートを如何に最小限に抑えることに尽きます。
そのため、評価項目は、ブレイクに対する反応の早さ、ブレイクに対する切り返しのスムーズさの2つです。それでは、1つ1つについて見ていきます。
ブレイクに対する反応の早さ・ブレイクに対する読み
これは、文字通りレシーバーのブレイクに対していかに早く反応して同じようにブレイクできるかです。NFLレベルになると、まるでレシーバーの影かのように、レシーバーのブレイクとほぼ同じタイミングでブレイクします。
Stephon Gilmore、Darrelle Revisらは先読みしていたかのように、一見すると同じタイミングでブレイクします。
ブレイクに対する切り返しのスムーズさ(Change of Direction能力)
Photo by Joe Robbins
ブレイクの際は基本的に走る方向が変わるので、如何に滑らかに早く方向転換できるかが大事です。一般的にサイズが大きい選手はこの動作を苦手とします。この能力が低いと、それまでどれだけ密着マークしていてもあっという前にセパレートされてしまいます。
NFLでは、Drrelle Revisは特にこの動作が滑らかです。
フェイズ④ ブレイク後
4つ目のフェイズはブレイク後の段階です。
このタイミングで、レシーバーはブレイクしてさらにセパレートしようとします。
そのため、このフェイズでのCBの目的は先ほどのフェイズと同じでセパレートされないことです。
そのため、評価項目は、バースト、トップスピードの2つです。それでは、1つ1つについて見ていきます。
バースト(加速)
これはブレイク後にいかに早くギアを上げてトップスピードまで持っていけるかという能力です。先程のChange of Directionとよく似ており、この能力が劣っていると、すぐにセパレートされます。
NFLでは、Asante Samuelのこの能力は飛びぬけており、QBが届かないと思って投げたボールもINTされるほどです。
トップスピード(ディープルートで置いていかれないか)
Photo by Brian Spurlock-USA TODAY Sports
ロングパスなど長いルートでは、いかにバーストがあってもそもそもトップスピードがいまいちだと置いていかれます。そのため、シンプルなスピードが重要です。
NFLでは、Patrick Petersonのスピードはずば抜けており、後追いでも無理やり追いつくスピードを持っています。
フェイズ⑤ キャッチ直前
Photo by Tim Heitman-USA TODAY Sports
最後の5つ目のフェイズはキャッチ直前の段階です。
それまでのフェイズで上手く密着カバーできていても、このフェイズの能力が低いとカバーできているのにパスキャッチを許してしまうことになります。しっかりカバーできていて手を出せばカットできるのに…という場面はNFLでもよく見ると思います。
そのため、このフェイズでのCBの目的は、レシーバーがパスキャッチするのを防ぐことです。
そのため、評価項目は、適切なタイミングでボールを見るために振り返れているか、球際の上手さの2つです。それでは、1つ1つについて見ていきます。
ボールを振り返るタイミング
Photo by: https://www.nfl.com/news/2022-nfl-season-s-top-10-shutdown-cornerbacks-eagles-duo-leads-group-sauce-gardn
ボールを振り返るタイミングは早すぎても遅すぎても良くありません。早すぎるとスピードが落ちてしまい、遅すぎるとパスカットすることが出来ませんしDPIを取られることもあります。
NFLではTrevon Diggsが上手く、いいタイミングでボール・QBの方を振り返れるのでINTを量産できます(早すぎてレシーバーにセパレートを許す場面も見ますが…)。
ボールへのアクセスの上手さ
Photo by Jonathan Ferrey/Getty Images
これは最終局面で実際にボールをパスカット・INTする能力です。ボールスキルと呼ばれたりします。一般的にサイズがある、腕が長い選手が有利です。PDが多い選手なんかはこの能力が高いです。
NFLでは、Richard Sherman、Trevon Diggsが良い例で、ギリギリのところでパスカット・INTする場面がよく見られました。
まとめ
各項目でCBに必要な能力の優先順位をつけると下のような重要度になると思います。
フェイズ | 評価項目 | 重要度 | |
---|---|---|---|
1 | リリース時 | バンプの上手さ (ハンドテクニック) | 低 |
リリースフェイクに釣られないか (腰を開かず我慢できるか) | 中 | ||
リリースに対して滑らかに反転できるか (腰を滑らかに開けれるか) | 高 | ||
2 | リリース~ ブレイク | レシーバーに付いていくスピード | 低 |
チェックの上手さ | 中 | ||
3 | ブレイク時 | ブレイクに対する反応の早さ ・ブレイクに対する読み | 中 |
ブレイクに対する切り返しのスムーズさ Change of Direction能力 | 高 | ||
4 | ブレイク後 | バースト(加速) | 高 |
トップスピード (ディープルートで置いていかれないか) | 中 | ||
5 | キャッチ直前 | ボールを振り返るタイミング | 中 |
ボールへのアクセスの上手さ (ボールスキル) | 高 |
またCBとは別に、良いシングルハイFSの見分け方はこちらの記事から
優れたシングルハイFS(セーフティー)の見分け方