SabanのMatch Cover(Cover 7)

SabanのMatch Cover(Cover 7)

マッチカバーMatch CoverのCover7についての記事になります。

この記事では次の流れで書いていきます。
①Match Coverとは、狙いは
②Match Coverのメリット・デメリット
③Match Coverのバリエーション

 

まず、各カバーの基本的な説明は下記事に書いています。

パスカバーの分類(マンカバー、ゾーンカバー、マッチカバー)

 

①Match Coverとは、狙いは

まず、Match CoverとはAlabamaのHC Nick Sabanが作り上げたパスカバーのことです。

Photo by: https://www.cbssports.com/college-football/news/nick-sabans-wife-made-him-run-on-treadmill-over-unsportsmanlike-conduct-penalty-in-alabamas-win-over-duke/

そしてMan Cover、Zone Coverとは異なるカバーです。Man Coverの一種とも言うことが出来ますが、マンカバーと異なり事前にマンツーマンする相手が決まっていません。しかし、最終的にはルールに則りマンツーマンするレシーバーが決まり基本的にはマンツーマンでカバーします。

Match Coverの具体的な説明をする前に、このカバーの狙いについて把握した方がMatch Coverの理解が早いと思いますので、狙いについてまず書いていきます。

 

Match Coverの狙い

まず、Match CoverはMan Coverの弱点を補うために生まれましたMan Coverの大きな弱点は、WRの全方向のパスコースをカバーする必要がありDBの負担が大きい(完璧にカバーする難易度が高い)ことが挙げられます。WRよりDBの方が能力が高い場合はカバーの難易度は低いですが、実力が拮抗している場合は1試合を通してカバーし続けることは不可能に近いです。
一方、Zone Coverでは、レシーバーが自分のエリアに来るのを待つため能力差があっても守りやすいです。しかし、自分のエリアにレシーバーが来ない場合、不必要なエリアをカバーしてしまいます。

 

そこで、それらの良いところを混ぜたのがMatch Coverです。

まず、Match Coverでは、ディフェンスはWRの全方向のパスコースをカバーする必要はありません。例えば、下の例では、Man Coverでは、CがX、$がZをカバーする必要がありますが、クロスしていることもあってマンカバーは非常に難しいです。
対して、Match Coverでは下の赤矢印のようにカバーを受け渡します。具体的には、Cは外にきたWRを、$は内に来たWRをカバーします。こうすることで、Cは内側のルートを気にする必要がなくなります($は外側のルートを気にする必要がなくなる)。

Photo by: http://breakdownsports.blogspot.com/2018/10/inside-playbook-football-banjo-coverage-and-defeating-it-with-switch-release.html

(上の例は、Man Coverでも使うスイッチのルールですが、あくまで例として挙げています)

Match Coverの基本的な考え方はこれになります。全方向のルートをマンカバーする必要がなく特定の方向のみカバーすれば良いことになります。また、特定の方向のみカバーすれば良いので、上の例ではCはあらかじめ外付き($は内付き)することが出来ます。このように、ある種Zone Coverのようにレシーバーが来るのを待つことが出来ます。これがMatch Coverのメリットの1つの位置関係(Leverage)のメリットです。
それでありながら、Zone Coverとは異なり、Man Coverなので各ディフェンダーは必ずレシーバーをカバーしています。

それでは、Match Coverの例をまず1つ紹介します。(他のバリエーションについては後述します)

 

Match Coverの例

有名なMatch CoverがModです。

ディフェンスから見て右サイドが分かりやすいのでそちらで説明します。(通常のMan Coverであれば、CBは#1、Apexは#2をカバーしますが、)Modでは、CBが#2のコーナー、Apexが#1のフックをカバーしています。

Photo by: https://sportstreatise.com/2021/01/saban-pass-coverages/

このカバーの原則は、Mod(Man Outside and Deep)という名前の通りCBはディープのアウトサイドに来たレシーバーをカバーします。そしてApexはflatに来たレシーバーをカバーします。また、FSはRead #2 to #1で、まず#2からチェックし縦にきていればカバー、来ていなければ#1をカバーです。

CBは#1が短い系のルートであればカバーしなくていいので、あらかじめ長いパスコースを警戒することが出来ます。また、Apexはflat系のカバーなので奥は警戒する必要がなく、ブレイクに反応しやすいです。このように具体例で確認しましたが、各ディフェンダーはある程度コースを絞ってマンカバーできます。これがMatch Coverです。

 

それでは、ここでMatch Coverの特徴をまとめておきます。

Man Match Coverの特徴

Match Coverの特徴は次の通りです。

①あらかじめマンカバーするレシーバーが決まっていないマンカバー
②全方向のルートをカバーする必要がないマンカバー
③左サイドと右サイドで独立したパスカバー
④レシーバーの人数+1人のディフェンダーでカバーするパスカバー

③④についてはあまり説明していないので説明します。

③についてですが、通常のパスカバーは左サイドはCover 1で右サイドはCover 2と分けることは出来ず、フィールド全体で1つのパスカバーです。ですが、Man Match Coverでは、各サイドでパスカバーが独立しています。例えば、左サイドはModで右サイドはCutなど別のカバーでも成り立ちます。そのため、各サイドでパスカバーが異なるのでQBはパスカバーを把握するのが難しいです。

また、④についてですが、Match Coverはマンカバーするレシーバーが事前に決まっておらずレシーバーのコースを見てマンカバーするレシーバーが決まるので対応が若干後手になります。また、ルートコンセプトによっては同数では物理的にカバーできないことがあります。そのため、通常1人余るように作っています。 

 

ここまで、Match Coverの狙いや特徴について説明しましたが、このようなMan Match CoverをCover 7と呼んだりします。Cover 1、2、3のようにSが最後尾に何人いるかを示したパスカバーではなく(最後尾にSが7人もいるカバーも見てみたいが…)、Man Match CoverのことをCover 7と呼びます。

 

②Match Coverのメリット・デメリット

それではここからメリットデメリットについて説明します。

Match Coverのメリット

メリットは次の通りです。

①位置関係(Leverage)が有利な状態でM/M出来る
②QBにカバーを読まれにくい

①が最大のメリットです。というより、これをするために生まれたのがMatch Coverです。

 

Match Coverのデメリット

デメリットは次の通りです。

①複雑
②ミスによるドフリーのレシーバーを作る可能性がある

①②もほとんど同じことですが、シンプルなマンカバーではないため、理解不足やコミュニケーションミス等によりフリーのレシーバーを作る可能性があります。これはNFLレベルでもたまに見かけます。

 

③Match Coverのバリエーション

それでは最後に、Match Coverの具体的なバリエーションについてみていきます。

片サイドのレシーバーの人数に応じて分けてまとめています。各カバーについての細かい説明は様々なサイトでされているので割愛します。ですが、自分用に表にまとめてみたので、カバーが分からないときなどは参考にしてみて下さい。

 

Triangle Coverage(vs 2)

レシーバー2人に対して

 

Box Coverage(vs 3)

レシーバー3人に対して

 

Full Field Coverage(vs 3×1)

 

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