フラッグフットボールのオーストリアオフェンスについての記事です。
前回2024年8月の国際大会で女子日本代表は見事3位でした。そんな代表の次なる国際大会が決まったみたいなので、参加国の前回大会のプレー振り返りをやりたいと思います。
(前回大会のプレーを次の大会でどこまで使うか分かりませんが…)
今回は、日本が3位決定戦で見事勝利を収めたオーストリア(世界ランク現在5位)です(日本は世界ランク3位)。
※今回の分析では、準決勝(vsアメリカ)、3位決定戦(vs日本)の2試合分のデータを基にしています。
ちなみに、日本戦のスコアは41-40でした。
世界ランク1位のアメリカオフェンス分析についてはこちら↓
なぜアメリカは世界一?ロングパス成功率から読み解く戦術
世界ランク2位のメキシコオフェンス分析についてはこちら↓
メキシコオフェンス分析(フラッグフットボール)
オーストリアオフェンスの特徴
オーストリアオフェンスの特徴は、メキシコと大きく異なっています。メキシコはインとアウトを組み合わせたHorizontal Stretchが中心でしたが、オーストリアはVertical Stretchが中心となっています。具体的にオーストリアの各パスコンセプト使用率は次グラフの通りです。
Vertical Stretchである、縦&アウト(縦押ししたレシーバーの手前にアウトのレシーバーを走らせるパターン)とFloodのパターンが多く、それらが約半分を占めます。
各パスコンセプトの使用率とパス成功率は次表の通りです。
使用率トップ3のパスコンセプトについて個別に見ていきます。
縦&アウト(使用率25%、パス成功率82%)
最も使用率が高く、かつパス成功率も高いオーストリアの主軸となるパスコンセプトです。
このコンセプトのほとんどのプレーでは、縦ではなくその手前のコースに投げられており、縦押しするレシーバーはコンセプト通りデコイとなることが多かったです。
また、このコンセプトの中でも多用されているのが、縦&アウトとアウト&フックの組み合わせのプレーです(下図)。
このプレーは縦&アウトのコンセプトの中でも32%(7/22回)を占めており、特筆すべきは全てパス成功となっている点です。シンプルなプレーながら、緑と青色のコースの組み合わせでVertical Stretchを作り、緑と赤色のコースの組み合わせでHorizontal Stretchを作っており、カバーしづらくなっています。
ちなみに、上図のようなアンダーセンターかつ単騎(wideにセットするレシーバーが1人だけ)のセットの場合、必ず(7/7回)このプレーでした。そのため、このセットになれば狙い目かもしれません。
続いて2番目に使用されているパスコンセプトに移ります。
Flood (使用率21%、パス成功率61%)
このコンセプトはアメフトでもカバーしにくく有名なものです。pureなスポットを守るゾーンカバーでは3人のレシーバーの内、必ず1人は空いてきます。そのため、マンカバーやゾーンマッチで守る必要があります。
アメフトでは、このパスコンセプトの対策としては、Busterが有名です。Busterについてはこちらの記事で書いています。
【完全版】NFLの150種類のパスカバーを体系的に分類&解説
4人フックorフックフェイク(使用率17%、パス成功率67%)
フラッグではどのチームもよく使うプレーです。オーストリアも例外ではなく、短い距離をこれで稼いでいました。
その他
また、その他のプレーの傾向としては下記のようなものがありました。
・ショットガンかつ単騎セットの場合、単騎レシーバーのパスコースは全て(6/6回)イン
・2×0セット(もう1人のレシーバーはCのすぐ横)の場合、Cのパスコースはフック中心(9/10回)で、残り1回はイン
・G前残り5yd以下の場合、Bunch(4人全員近めセット)使用率が高い(53%(10/19回))
G前のBunchはごちゃごちゃしてフリーのレシーバーが生まれやすいため、多用されることを見越して対策が必要です。