新スタッツ(Pass rating with Coverage snap Adjustment)の紹介

新スタッツ(Pass rating with Coverage snap Adjustment)の紹介

新しいディフェンスのstatsのPass rating with Coverage snap Adjustmentに関する記事です。

 

内容は、ディフェンスのパスカバーに関する新たなスタッツを作ったので、それについてです。

記事の流れは次のようになります。
そもそもなぜ新しいスタッツを作ろうと思ったのか
では新しいスタッツはどんな指標にするのか
実際にその新しいスタッツの説明
最後にその新しいスタッツと既存のスタッツとの比較

 

なぜ新スタッツを作るのか

これは一言で、単一の既存スタッツでは、主にCBを評価できないからです。

まず、代表的なスタッツとしてINTやPDがありますが、これだけではCBを評価できないのは周知の事実だと思います。さらに、advanced statsとしてYards/Coverage snapやPass ratingなどもありますが、これらも下表のように欠点があります

 

分かりやすい例として、今年2023年のAll-ProのDaRon BlandとSauce Gardnerを見ていきましょう。
Blandは、Pass ratingはリーグ7位とこの指標で見ればかなり良いですが、Yds/Cov snapはリーグ46位といまいちです。また、SauceはPass ratingはリーグ25位とこの指標で見ればそこそこですが、Yds/Cov snapはリーグ1位です。

このように、評価する指標によって大きく差が出てしまいます

 

(ちなみに、スタッツのみでCBを評価できないのはもちろん分かっていますが、スタッツで評価するならばと言う形でこの記事を書いています。)

 

新スタッツはどんな指標にするのか

既存スタッツに問題がある事は分かりましたが、どんなスタッツを作ればいいかずっと悩んでいました。そこで思い付いたのが既存スタッツの中ではよく使う、Yds/Cov snapとPass ratingを合わせるという案です。それぞれのスタッツはお互いの欠点を補っているため、このような考えに至りました。

具体的には後述しますが、Pass ratingをベースにその算出に使われるTargetsをCoverage snapsに置き換えます

 

新スタッツPass rating with Coverage snap Adjustmentの算出方法

それではその算出方法です。

まずこれが一般的なPass ratingの算出方法です。

続いてこちらが新スタッツのPass rating with Coverage snap Adjustmentの算出方法です。赤字が変更部分です。

変更箇所は大きく2点ありまして1つ1つ見ていきます。

 

①Pass ratingのTargetsをcoverage snapsに変更

この理由として、Pass ratingの欠点でも述べましたが、Pass ratingはTargetになったプレーのみが評価対象です。これは元々QBを評価するための指標なのでこうなっているのですが、DBはQBと異なりTargetになっていないプレーが大半を占めます。そのため、Targetになっていないがパスを通させてないようなプレーも含め全てのパスプレーを評価するために、TargetsではなくCoverage snaps当たりで評価します

(Cmp%に関わる”a”の算出は変更していません。)

Receiving Yardsに関わる”b”ですが、単純にTargetsをCov snapsに置き換えます。まずこれでYds/Cov snapの値を新スタッツに織り込むことができました。
TDとINTに関わる”c”、”d”も同じで、TargetsをCov snapsに置き換えます(上式の①)。

②係数調整

こうして決めた算出式をそのまま使ってもいいのですが、算出される値はPass ratingに比べて小さくなり分かりづらいです(Target数をCov snap数に置き換えているため)。そのため係数調整を行います。それが上式の②の青字部分です。

やり方はいろいろあり何でもいいのですが、ここは分かりやいよう、単純にCov snapsに係数をかけて値を小さくします。その係数ですが、リーグ平均Target%(Average Targets÷Average Cov snaps)として、Cov snapsに平均Target%を掛けることで、スケールを小さくしています。(平均Target%はCB全選手のTargets、Cov snapsの平均値から算出される値です。)これで従来のPass ratingと同じような幅で算出できます。

これらをまとめたものが前述したものと同じ下式です。

まとめると、新スタッツでは、(a) Cmp%、(b’) Yds/Cov snap、(c’) TD/Cov snap、(d’) INT/Cov snapの4つを指標から算出します。CBに関係するスタッツは全て網羅出来ていると思っています。

 

③スタッツ名の由来

Pass rating with Coverage snap Adjustmentというスタッツ名は適当です。従来のPass ratingをCoverage snapを使ってAdjustmentしている、と伝わればいいかなと思っています。

また、スタッツ名が長いので私が今後呼ぶときはPRCVと呼びたいと思います。

 

新スタッツと既存スタッツの比較

最後に、既存スタッツと新スタッツを実選手データを使って比較します。まずは、記事の序盤で述べたBlandとSauceの例ですが、Blandは、Pass ratingはリーグ7位、Yds/Cov snapはリーグ46位に対して、新スタッツのPRCV(Pass rating with Cov snap Adjustment)はリーグ7位。Sauceは、Pass ratingはリーグ25位、Yds/Cov snapはリーグ1位に対して、新スタッツのPRCVはリーグ13位とそこそこいい感じになっているのではないでしょうか。

また、2023年シーズンのCB全選手のPass rating、Yds/Cov snap、新スタッツのPRCVをつけておきます

https://docs.google.com/spreadsheets/d/1_9lR1P0ULo0CJRCLptzJBvUY7ls_eyst/edit?gid=1182576463#gid=1182576463

一般的に、Pass ratingはTargetが多い選手ほど良い値になりがちですが、個人的にそれがあまり好きではありませんでした(CBはシャットダウンしてなんぼだと思っているので)。ですが、この新スタッツではその傾向は薄れています。Sauceのような地味スタッツの選手も新スタッツでは上位に食い込んでいます。

さらに、エクセル上のa,b’,c’,dの列を見ていただければ各CBがどの項目のスタッツが良かったか、悪かったか確認できます

 

念のため、過去2年間のCBの新スタッツPRCVとPass rating・Yds/Cov snapの関係を確認すると、それぞれ次のようになっており、当然Pass ratingの方が相関が強くなっています。

 

これで、PRCVにはパスカバーに関係するスタッツはほとんど考慮されていると思っています。反則(DPIやホールディング)は入っていませんが、それは簡単に入れれるので今は入れていません。

 

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