本日は、NEの勝利で終わった53回スーパーボウルのレビューの記事になります。
Photo by: https://www.nbcsports.com/boston/patriots/watch-bill-belichicks-reaction-stephon-gilmores-super-bowl-interception
結果はご存知のようにNE 13 – LAR 3でした。
NEの勝因は何と言っても、2018年今シーズン得点、獲得Yardが共にリーグ2位のLARオフェンスをわずか3点に抑えたNEディフェンスです。そこで、この記事では、NEディフェンスがHCマクベイ率いるLARオフェンスをどのようにして封じたかについてにまとめていきます。
その要因は大きく3つあります。
- 許したランは62Yard(LARは強力なランを軸としたPAなどを効果的に使うチーム)
↑DBもランプレーにからむ機会を増やした。LARお得意のモーションを絡めたラン対策を行った。 - 許したパスは198Yard
↑パスラッシュ、DBのパスカバーが共に良かった。 - 3rd down成功率は23%
↑ディスガイズが効いていた。
それでは、1つ1つ見ていきたいと思います。
1. 許したランはわずか62Yard
まず、LARはRB ガーリー、RB アンダーソンによるリーグ3位のランオフェンスが武器です。ランを出すことで、プレーアクション、ジェットスイープなど他のプレーも止められなくなります。そのため、ランをまず抑えるのがLARを抑える上で最重要となります。そしてNEは見事に62Yard(LARのレギュラーシーズンの平均は139.4 Yards)に抑えました。
その対応策として、NEは、DBのランディフェンスへの積極参加とLARが多用するモーションを絡めたラン対策を行いました。それについて見ていきます。
DBのランディフェンス
通常、ランを止めるとなると、ボックスにいるDL・LBの対策がメインとなります。しかし、実際はボックス外にいるDBも非常に大事になります。NEのDBのランディフェンス機会を増やす方法としては単純でした。
それはゾーンカバーを多用したことです。
これは当然ですが、マンカバーではCBはダウンフィールドではなく対面のレシーバーのみを見ているので、ランに気付くのが遅くなります。ゾーンカバーではCBはダウンフィールドを見ているのでランにすぐ気づけます。ということで、NEはランシチュエーションではゾーンカバーを多用しました。ランシチュエーションでゾーンカバーを用いた割合はなんと82%でした。
ゾーンカバーを多用した結果として、この試合のタックル数上位3人はDBとなっています。SS ジョーンズが8 Tkl、CB ギルモアが5 Tkl、CB J・マッコーティーが5 Tklです。また、ほぼ前半のみの出場となってしまったSSチャンも4 Tklとなっています。
モーションを絡めたランの対策
LARは、モーションからのジェットスイープやそれを囮にしたノーマルなランなどを得意としています。このモーションにディフェンスの選手がついていかなければ、ジェットスイープ時に外をまくられます。逆に、モーションにつられすぎると、通常のインサイドへのランなどでやられてしまうというジレンマがあります。
そこで、NEが行った対策は6-1 defenseを使ったことです。
6-1 defenseとは、スクリメージに6人選手を並べILBに1人のみ選手を置くディフェンスです。スクリメージの6人のエッジはLB ヴァンノイとSS チャンが務め、ILBはハイタワーが務めました。
この6-1 defenseの仕組みについては、TwitterでK猫さんが分かりやすく解説されているのでそちらを引用させていただきます。
どちらも(6-1も5-2も)モーションに対して強いですが、5-2だと1枚消されるとLoSのコンテインが消えますが、6-1だとコンテインが残ってLoSでOLを封じれるという算段だと思います。
LARのモーションは2枚いるILBの1枚を引きつける役割があるのですが、これをLoSにいるOLBが担うことでタックラーが自由になるんですよね。だから1枚だけでもILBはボールに対してアタックすれば良いので、逆にリアクションが楽になったと僕は考えています。
あとはLoSにいる5人がOL5枚と1vs1で負けなければRB vs ILBという単純な構図になるので、絶対止まるという寸法です。
まとめると、6-1 defense → モーション対策。外へのランはゾーンカバーでランにも参加できるDBがケア。中へのランはモーションを気にしなくていい1人のILBがケアということになります。
以上より、NEのゲームプランはおそらく次のようなものだったと思います。1st、2nd downはゾーンメインかつ6-1 defenseでまずランを抑える。3rd downはお得意のマンカバーで1st downを更新させないというプランです。
パスシチュエーション、3rd downなどについては次の章以降で説明します。それでは次にパスディフェンスについてです。
2. 許したパスはわずか198Yard
パスを抑えることができた要因としては、パスを抑えるためのQBにプレッシャーをかける、パスカバー、この2つどちらも良くできていました。
まずは1つ目のプレッシャーについてです。
DL、LB陣のプレッシャー
DLはスタントを多く使いながらQB ゴフに迫りました。中でもLB ハイタワーは2 Sck、3 QB Hit、LB ヴァンノイは1 Sck、3 QB Hitと大活躍しました。
またブリッツも多く入れました。NEのレギュラーシーズンのブリッツの割合は32%でしたが、この試合は57%と多用しています。
これらにより、ゴフはドロップバックの40.5%でプレッシャーを受けています。
そしてゴフはそのプレッシャーに苦しみました。プレッシャーのありなしではここまで↓成績が変わっています。
次に2つ目のパスカバーについてです。
DBのパスカバー
事前の予想では、WR ウッズにCB ギルモアがマッチアップして、WR クックスにCBとSのダブルカバーをするというものでした。
しかし、始まってみると、ウッズはCB J・マッコーティーがカバーして、クックスはダブルカバーを使わずギルモア1人でカバーするというマッチアップでした。先程のランチシチュエーションと異なり、パスシチュエーションではいつものNE通りマンカバーを多用していたので、ギルモアはクックスをカバーし続けました。1人でクックスをカバーするという厳しいタスクでしたが、結果としてギルモアがカバーしている間はクックスを3/7 32Yard 1INTに抑えました(マンカバーでは1/4 14 Yard 1INT、ゾーンカバーでは2/3 18 Yard)。やはり彼のマンカバー能力は素晴らしいです。
他にも、J・マッコーティーやFS ハーモンのTDを防ぐビッグプレーがありました。この2つのプレーがなければ勝敗が変わっていたかもしれないというビッグプレーです。
このプレーのハーモンは本当に凄かったです。ゴフの動きを良く判断して素早いブレイクでした。あと少しでも判断が遅れていれば…というプレーでした。
全体としてNEのパスカバーはマンカバーのときが、6/20 83Yard 0TD 1INT QB Rating 23.5、ゾーンカバーのときが、11/21 134Yard 0TD QB Rating 72.3と文句なしです。
最後のポイントとして要所となる3rd downを抑えたことがあります。
3. 3rd down成功率は23%
レギュラーシーズンのLARの平均成功率は45%となっており、約半分まで下げたことになります。
この要因として、要所要所でのパスカバーのディスガイズが効きました。
今シーズンNEは大事なところで、プレスナップの段階で後ろにSを配置しないCover0ぽいものをちょこちょこ使っています。ブリッツを入れるCover0に見せかけて通常のCover3やCover1のパスカバーに変更するといったことをよくします。例えば、こんなプレーです。
この動画はCover0に見せかけたCover1です。これがプレーオフから効果的でした(LACのリバースも苦しんでいました)。
個人的MVP
最後に私が選ぶ個人的なMVPはハイタワーです。
Photo by: https://www.sbnation.com/nfl/2019/2/6/18211917/donta-hightower-2019-super-bowl-mvp-hero-patriots-sack-jared-goff
2 Sck、3 QB Hitは見事でした。彼とヴァンノイのラッシュがなければ、ここまでLARを抑えることはできなかったと思います。さらに、彼をMVPに選んだ理由は、少ないパスラッシュ機会で2サックを記録したからです。彼はLBでありパスプレーの54%しかラッシュしていません(ヴァンノイはパスプレーの51%)。非常に効率がいいです。
次点でヴァンノイとギルモアです。
まとめ
強力オフェンスを抑えることできた要因をまとめると次のようになります。
- ランシチュエーションでゾーンカバーを使い、DBのランディフェンス参加機会を増やし外へのランをケア。
- 6-1 defenseを使い、LARの得意なモーションを絡めたランを抑える。
- スタント、ブリッツを使いながらQBにプレッシャーをかける。
- ギルモアが1人でクックスを抑える。
これらがNEディフェンスの出したLARオフェンスの抑え方です。
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